教授挨拶
京都大学形成外科について 形成外科は英語ではPlastic and Reconstructive Surgeryといい、名前の通り、形を作り、失われた組織を再建することを目的とする診療科です。京都大学形成外科(京都大学大学院医学研究科形成外科学講座)は、京都大学医学部附属病院皮膚科と耳鼻咽喉科で形成外科診療を行っていた医師が集まり、1977年4月に独立した診療科となったのが始まりで、日本の国立大学では2番目に設置された形成外科です。その後1980年に一色信彦先生が初代教授となり、1987年に正式な講座となりました。1993年には西村善彦教授(二代目)、2003年には鈴木茂彦教授(三代目)が着任されました。設立の経緯から、口唇口蓋裂、小耳症などの顎顔面領域の先天異常の治療と、熱傷、瘢痕拘縮、ケロイド、皮膚腫瘍(良性、悪性)、母斑(あざ)などの皮膚再建治療が診療の中心となってきました。その後、形成外科の守備範囲は拡大し、顕微鏡下で微細な操作を行うマイクロサージャリー技術の急速な発展と共に、1ミリに満たない血管、神経、リンパ管を吻合、縫合する技術は形成外科の得意分野となりました。これに伴い、マイクロサージャリー技術を必須とする、手の外科、乳癌や頭頸部癌などの欠損を再建する組織移植手術も形成外科治療の柱となっています。また、最近注目される再生医療・細胞治療も皮膚再生分野を中心に発展しており、細胞を使用した製品として日本で初めて承認された自家培養表皮、真皮再生の足場となる人工皮膚も形成外科の日常診療で使用しています。褥瘡、糖尿病性潰瘍などの難治性皮膚潰瘍、眼瞼下垂症などの加齢に伴う疾患、腋臭症、シミ、シワ治療も形成外科で行います(一部保険診療外)。 形成外科は手術治療が基本となりますが、手術しないで治療できれば治ればそれに越したことはありません。急速に進歩する分子標的薬を用いた治療、遺伝子治療、そして細胞治療や海外、国内で開発される新しい人工材料などが今後の形成外科治療に加わってくると予想されます。従来の手術治療も含め、患者さんのご希望に合わせた最善の治療を提供したいと考えています。