中手骨短縮症(中足骨短縮症)
中手骨短縮症(中足骨短縮症)について
「指が短い」
「趾(あしゆび)が短い」
疾患の概要
主に足の4番目の中足骨と呼ばれる趾(あしゆび)よりも足首側にある骨が短いために、趾がひっこんだようになる病態です。手に同様な病態が生じることを中手骨短縮症と呼びます。これは中足骨に成長障害が生じる病気であり、成長するに従って顕著となるために小学校高学年や中学生の頃に自覚し来院される患者が大部分です。中手骨短縮症については握りこみをした際にMP関節の突出(こぶし)が認められません。機能的障害はほとんどありません。一方中足骨短縮症は歩行自体が障害されることはありませんが、趾が短くなるため、隣接する趾が短くなった趾の空隙に倒れこむような現象が見られます。趾の短縮度によりますが、短縮が顕著であれば隣の趾の変形を引き起こします。短縮が軽度であれば、機能的な障害はほとんどありません。
短縮した中足骨に対しては、骨の延長術が行われます。成長過程のお子様が大半であるため、治療時期については専門医の判断に委ねられます。成長期にはまだ成長軟骨が活動しているため、治療に際してその成長線を抑制することがあってはいけません。また今後の成長を見越した延長が必要となります。多くの方は整容面での改善を強く希望していますので、足に大きなキズが残らないように配慮されます。また延長によってMTP関節が足底側に突出すれば、その部位にたこや痛みを生じることがありますので、延長する方向にも細心の注意を払います。
骨延長術は創外固定器と呼ばれる機械を骨に取り付けて、骨きりを行います。固定器は延長機能があり、ねじを回すことで骨きりした骨が引き離されます。少しずつ延長していくと、仮骨と呼ばれる幼弱な骨が出来てきます。骨がまだやわらかく弱い間に延長を十分に行い、目標とされる延長が得られたら、consolidationと呼ぶ待機を行い、骨がしっかり強くなるのを待ちます。およそ延長が1ヶ月、待機が2ヶ月と考えてよいでしょう。
手術時期は主に小学校高学年-中学生以降に行うことがほとんどです。
麻酔は局所麻酔か、希望により全身麻酔となります。麻酔についての不安についてはどの患者さまもお持ちです。丁寧に説明させていただきます。
第4中足骨症の手術前と延長終了時の状態(上)とX線(下)です。成長が抑制されていた第4中足骨が長くなり、周りの中足骨との配列が自然になりました。
手術の詳細
1.創外固定器の装着
5-6cm程度の長さの創外固定器を4本のピンを用いて中手骨(または中足骨)に装着します。
2.骨切り
3mm程度の横切開から中手骨(または中足骨)の真中に入り、小さなノミで骨きりを行います。
3.延長開始
術後5日目前後から創外固定器のネジを回転させて骨きり部分の延長を開始します。この作業は自宅で行っていただくことになります。カレンダーのような表を作成し、それに毎日の延長量を記載していただきます。
4.仮骨のconsolidation
仮骨は弱く、創外固定器を外すと後戻りをすため、骨がしっかりと固くなるまで待機します。
創外固定器のピンの周囲にゆるみや化膿が認められた場合には、固定器を外して鋼線に変えることもあります。骨が固くなるまでに1-2ヶ月を要します。
5.傷あとについて
骨きりの際の小さな傷と、ピンのあとが残ります。きずあとはほとんど目立ちません。
6.機能的予後について
延長とともに指(趾)が過伸展することがあります。これを予防するためにMP関節(足ではMTP関節)鋼線を留置しますが、それでも過伸展する場合には腱の延長を行うこともあります。
手術後の見通しについて
手術後数日
・ 指(または趾)が腫脹して血行障害が起きていないかをチェックします。
・ 鋼線や固定器がうまく装着されているかチェックします。またそれらの消毒の方法を勉強して頂きます。
手術後-骨癒合(約3ヶ月)まで
・ 1日1-2回、規則正しく骨の延長を行います。痛みがある場合には延長をストップすることもあります。外来では週1回チェックさせて頂きます。
・ X線を1週ごとに撮影し、骨の延長や癒合の度合いを見ていきます。
骨癒合確認後以降
・ 関節可動域訓練を行います。
(written by S. Saito, 2013)