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リンパ浮腫

リンパ浮腫とは

リンパ流は体内の老廃物を心臓まで運ぶ重要な循環機能です。がんの治療の一環として行われるリンパ節郭清(転移が疑われるリンパ節を取り除く手術)や放射線治療などでリンパ節やリンパ管が障害された場合、リンパの流れが滞ることでリンパ液が四肢に貯留してリンパ浮腫を引き起こすことがあります。生まれつきのリンパ形成異常による浮腫(原発性リンパ浮腫)もあります。浮腫によるボリュームの増大で関節が動かしにくくなり、放置すると徐々に悪化して皮膚が硬くなったり、炎症(蜂窩織炎)を起こしやすくなったりします。
一度発症すると完治が難しく、また悪化することでさらに改善が困難になります。そのため、予防と早期発見に努め、継続的に管理していくことが大切です。日常生活のなかで、体重管理、適度な運動、衣類の工夫など、症状悪化を防ぐポイントがあり、これらに加えて複合的理学療法(スキンケア、リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法)を適切に実施することで重症化を防ぐことができます。

形成外科の役割

リンパ浮腫はがんの手術に起因するものが9割以上を占め、一度発症すると完治が難しく、生活の質(QOL)の低下につながります。当院では、がんの手術に伴うリンパ浮腫の早期発見と治療介入、悪化の予防、よりよい生活の維持を目指し、「リンパ浮腫ユニット」として、当院でがん手術を受けられた患者さんを対象に、お一人お一人に合わせたケアをチームでサポートします。形成外科では、複合的理学療法を導入済みの患者さんについて、さらなる改善を期待してリンパ管静脈吻合術やリンパ節移植術などの外科治療を実施しています。

手術方法

手術にはリンパ管の流れを改善する方法(リンパ管静脈吻合術、血管柄付きリンパ節移植術)と、ボリュームを減少させる方法(主に脂肪吸引)があります。リンパの流れを改善させる手術はリンパ浮腫の発症早期に行うと効果が高いとされており、中には弾性着衣の装着が不要になることもあります。ただし、基本的には、いずれの方法もリンパ浮腫を完治させるものではなく、浮腫みにくくなったり、蜂窩織炎の発症頻度を低下させたりする効果が報告されています。

・リンパ管静脈吻合術
浮腫を生じている四肢の皮膚を数cm切開して、リンパ管と皮下静脈を吻合することによって、貯留したリンパ液を静脈に還流させる手術です。この手術は局所麻酔でも全身麻酔でも受けることができます。手術の前後には圧迫用の包帯を患肢に巻いてできるだけ浮腫を軽減させる(多層包帯法による集中排液)ことが有効であり、手術前に多層包帯の手技を習得していただく必要があります。手術は原則として術後1週間の入院で行っていますが、患者さんの状態によっては、手術1週間前からの入院や、短期入院もしくは日帰り手術で行う場合もあります。

・血管柄付きリンパ節移植術
浮腫を生じている四肢に、身体の別の部位から採取した健康なリンパ節を移植する手術です。移植したリンパ節は一定の時間を経て機能しはじめ、周囲の組織のリンパ液を吸収すると考えられています。リンパ節の採取部位は、鼠径部、腋窩、頸部、腹腔内など様々な候補があり患者さんの状態に応じて検討します。不適切な採取によって新たなリンパ浮腫を生じさせる可能性があるため、当院では術中ナビゲーションシステム(MIPS)を用いて安全な採取が行えるよう工夫しています(論文1, 2)。手術は全身麻酔で行い、術後は1〜2週間の入院が必要になります。

・脂肪吸引
リンパ浮腫が長期にわたると皮下脂肪が増えてきます。弾性着衣や多層包帯などで圧迫してもボリュームはあまり減少せず、リンパ管の流れを改善させる手術の効果も期待しにくくなります。このような患者さんでは、数mmの皮膚切開から脂肪を吸引することでボリュームを直接減少させることができます。ただし、脂肪吸引する箇所はリンパ管を損傷させる可能性があるため、前述のリンパ管静脈吻合術などと組み合わせて治療を行っています。