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赤ちゃんの頭のかたち外来

変形性頭蓋変形(斜頭、短頭)とは

赤ちゃんの頭は柔らかいため、胎内や産道で圧迫等の影響を受けやすく、多くの赤ちゃんは多少の変形をともなって生まれてきます。出生後にさまざまな姿勢をとることによって、自然と丸く対照な形になります。しかし、向き癖や筋性斜頸、入眠時間が長い、などにより頭の同じ部位に圧力がかかると、変形が悪化します。変形性斜頭・短頭の定義は「胎内または出生後の圧力による赤ちゃんの頭の変形」であり、病的なものではありません。斜頭は、1のように頭蓋のみの変形(軽症)から、顔面の左右非対称を伴うもの(重症)があります。短頭は、後頭部が平坦な頭(いわゆる絶壁頭)のことをいいます。 変形性斜頭と短頭を診断するには、頭蓋縫合早期癒合症という病気を除外する必要があります。これは、本来乳児期に開存しているはずの頭蓋骨の割れ目が癒合してしまっている病的な状態で、手術が必要となることがあります。そのため、鑑別診断のため、レントゲンやエコー、頭部CT検査をおこなうことがあります。お子さんの頭のかたちが気になる方は、一度ご相談ください。

 

図1:変形性斜頭の重症度分類

 

 

頭蓋形状誘導ヘルメット治療とは

日本では長らく、赤ちゃんの頭の形は自然に治る、という考えが浸透していました。アメリカで2000年頃から自費診療によるヘルメット治療が普及し始め、現在では50種類以上のヘルメットがFDA(アメリカ食品医薬品局)に登録されています。その影響を受け、日本でも関心が高まり、2012年に初めて国立成育医療研究センターで自費診療でのヘルメット治療が開始されました。現在では多くの施設でヘルメット治療がおこなわれるようになりました。 変形性斜頭・短頭の治療コンセプトは「除圧」であり、平坦な部分にかかる圧力を除去することが重要です。変形の主な原因が「向き癖」であるため、積極的な体位変換(=向き癖の修正)などの理学療法(次章)をおこなうことによって頭の変形が改善することがあります。中等症以上の変形では、体位変換だけでは改善がむずかしいことがあり、ヘルメット治療が勧められます(図2)。ヘルメット治療では、頭の形状に合わせてオーダーメイドで作成したヘルメットを装着することによって、平坦な部分にかかる圧力をなくす(=除圧)ことで平坦な部分の発育を促します。当院では、リモベビー(グンゼメディカル株式会社)というミシガン式の国産ヘルメットを採用しています。(https://remobaby.com/

 

図2:ヘルメット治療の適応基準

変形性斜頭・短頭に対する理学療法

① 環境調整・ポジショニング

  • 赤ちゃんの向き癖と反対側におもちゃを置く
  • ベッドの向きを変えてみる
  • 抱っこの方向を変えてみる
  • バウンサー、スイング、チャイルドシート等に長時間乗せない

② 運動発達促進

  • Tummy time(うつ伏せ時間): 胸の上で、1回5分を3〜5回から開始
    ※低月齢の赤ちゃんは必ず見守ってください
    ※就寝時のうつ伏せは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクがあり、推奨されません
  • 寝返りやおすわりの練習(首がしっかりと座ってから)

③ タクティークルケア

  • うつ伏せ練習の際、赤ちゃんの不安を取り除くための皮膚マッサージ

ヘルメット治療の流れ

 

料金について(自費診療)

<①に含まれるもの>
・LEDスキャナーによる頭蓋3Dスキャン(型取り)
・ヘルメット製作
・ヘルメット療法再診料(6回分)および再診時ヘルメット調整費用
・汗疹に対する治療費(軟膏代)
・治療終了時(開始後6ヶ月)の計測
・3Dスキャン

<①に含まれないもの>
・保険診療に含まれる初診料、検査代(エコー・レントゲン・頭部C T)
・患者さんの希望による7回目以降の再診料(上記②の料金を頂戴いたします)

よくあるご質問(Q & A)

Q. 変形性斜頭、短頭とは何ですか?

    1. 胎内または出生後に、頭蓋への偏った圧力が原因で生じる、赤ちゃんの頭のゆがみのことです。左右非対称のゆがみを「斜頭」、前後に短い変形を「短頭」といいます。胎内での姿勢や向き癖などが原因のことが多く、病気ではありません。

Q. 頭蓋縫合早期癒合症とは何ですか?

    1. 赤ちゃんの頭蓋はいくつかの骨のパーツから出来ており、生後すぐはお互いに離れています。頭蓋縫合早期癒合症では、それが通常よりも早い時期に閉鎖・癒合してしまう病気です。変形性斜頭・短頭との鑑別が必要で、エコーやレントゲンなどで診断できますが、早期には分かりにくいこともあります。治療には手術が必要ですが、現在当院ではおこなっていないため、他の専門病院へ紹介させていただくことがあります。

Q. どの程度のゆがみであれば、ヘルメット治療をした方がいいですか?

    1. 診察時に頭蓋の測定を行い、中等症以上(図1を参照)のゆがみの場合、ヘルメット治療の適応と考えられます。

Q. 頭の変形をそのままにしておくと、運動発達や将来の歯並び、姿勢が悪くなるって本当ですか?

    1. 頭の変形と、発達の遅れや歯並び、姿勢との因果関係は明らかではありません。また、ヘルメット治療をすることによってそれらが改善するという科学的根拠もありません。

Q. ヘルメット治療を開始する適正時期はいつですか?

    1. 首の座ったころ(生後3ヶ月)から生後6ヶ月が適正と言われています。それ以降に開始した場合は、ゆがみの改善を感じにくくなります。ヘルメットにはまだ早い時期であっても、理学療法などで形状が改善することもありますので、まずはご相談ください。

Q. 1日にどのくらい装着しておく必要がありますか?

    1. 初めは1〜2時間から始めて、最終的に23時間装着を目指します。その後、およそ6ヶ月間、1日23時間装着することが理想です。

Q. ヘルメット治療をすれば、必ず頭の形はよくなりますか?

    1. 装着時間を守っていただいた場合(1日23時間)に、重症度分類(1)が2段階改善することを目標としています(例:重症から→軽症へ)。そのため、軽症の方は効果を感じにくいことがあります。また、しっかりと装着できているにもかかわらず改善が見られない場合、他の疾患を合併していることがあるため、追加で検査が必要となることがあります。

Q. ヘルメット治療の副作用・合併症には何がありますか?

    1. 汗疹(あせも:蒸れることが原因)や褥瘡(床ずれ:ヘルメットが同じ場所に強く当たり続ける)などの肌トラブルが生じることがあります。気になる皮膚の変化があれば、診察時にお伝えください。

Q. ヘルメット治療をすると発達が遅れることはありますか?

    1. ヘルメット治療が発達の遅れの原因になるという報告は今のところありません。

Q. 成長で頭が大きくなると、ヘルメットを作り直す必要がありますか?

    1. 当院で採用しているリモベビーは、ツーピース型(ミシガン型)のため、頭の成長に合わせてサイズを調整することが可能です。通常、およそ6ヶ月間は作り直さずに装着することが可能ですが、成長により個人差があります。

Q. 6ヶ月経ってからもヘルメット治療を続けたいのですが?

    1. 頭蓋骨の成長は1歳頃までがピークで、それ以降の成長曲線はなだらかになるため、治療効果は少なくなります。また、ヘルメットがサイズアウトしたり、お子さんが嫌がって自分でヘルメットを外すようになったりして、装着が難しくなるケースが多いです。

Q. ヘルメット治療を終了した後、後戻りはありますか?

    1. 変形性斜頭・短頭のメカニズムから考えると、基本的に後戻りしないと考えられますが、正確なデータがないのが現状です。

Q. ヘルメット治療をしていく上で、追加料金はかかりますか?

    1. 通常の再診回数の中であれば、基本的に追加料金はかかりません。成長が非常に早いお子さんの場合は2つ目のヘルメットを作成することがあり、追加料金がかかりますが、非常にまれなケースです。患者様のご都合で7回目以降の診察を希望される場合は、規定の再診料を頂戴いたします。

Q. 頭の形は気になりますがヘルメット治療はまだ迷っています。相談だけでも受診してもいいですか?

    1. はい、頭蓋の測定や理学療法のみであれば保険診療で可能ですので、お子さんの頭の形が気になられる場合は、まずはご相談ください。また、こちらから一方的にヘルメット治療を強く勧めることはありませんので、ご安心ください。

外来受診について

赤ちゃんの頭のかたち外来は木曜日(午後)に設けております。 原則的に予約制となっておりますので、初診の時は、必ず他医療施設からの紹介状をお持ちいただき、 当院地域連携室を通して予約していただくようお願いいたします。

地域連携室(事前相談窓口):TEL 075-751-3111(平日9:00-17:00)

 

(文責:京都大学医学研究科 形成外科 宇都宮夏子)