先天性絞扼輪症候群
先天性絞扼輪症候群について
「指や趾、腕や下腿にくびれがある」
「くびれの末梢にむくみがある」
「手指が短く、癒合している」
疾患の概要
四肢の末梢にくびれが生じる先天異常の総称です。単純に皮膚にくびれのみ(絞扼輪といいます)を生じている軽いタイプから、くびれより末梢がひどいむくみを生じるタイプ(これをリンパ浮腫といいます)や、くびれとともに指やあしゆびが欠損するタイプまであります。遺伝性は指摘されておりません。
原因についてははっきりしませんが、内因的要因が原因とする理論と、外因的要因が原因とする理論と、2つの理論があります。内因的要因とは胎芽とよばれる体のもととなるものが分化する過程で一部が欠落した結果、絞扼輪ができるというものです。一卵性の双子に多く絞扼輪症候群が認められたとする報告がそれを支持しています。外因的要因とは羊膜が損傷され生じた繊維性の縄が体に巻きついたために絞扼輪ができたとするものです。動物実験で羊膜を損傷すると絞扼輪症候群のような状態が再現されたことからこの理論が支持されています。
症状が個々の患者で異なるために、それぞれの患者のニーズにあわせて治療計画を立てます。
- 絞扼輪のくびれを解除する手術
- 癒合している指やあしゆび(趾)(これを尖端合指症(合趾症)といいます)に対する分離手術
- 先端に骨がないため、ふにゃふにゃして安定しない指に対する趾骨移植術や骨移植術
- 短い指を最大限に長くするための延長術(仮骨延長術といいます)
以上のような治療が主に行われます。ただし指の分離や延長術の適応については慎重に検討される必要があります。それぞれの指が健常な腱や関節、血管や神経を有しているとは限らず、分離することにより機能的に低下する可能性や、血行障害を生じる危険性もあるからです。
趾骨移植術は先端に骨がなく、ふにゃふにゃとした指に適応されます。この手術を行うことにより指の先端がしっかりとするため、子供は積極的に指を使用するようになります。移植した趾骨の成長能力を生かすためには1-2歳までに移植を行う方がよいとする報告があり、当科ではこの治療については早い時機での移植を勧めています。
指の延長は仮骨延長術と呼ばれる手法を用いて、機能的かつ整容的な改善のために行われます。人為的に骨折を起こし(骨切り術といいます)、牽引する器械で骨折させた部分を広げていくことにより骨の延長を行います。幼少-年少期は特に骨の再生能が旺盛であり、広げた骨折部分はすみやかに自分の骨に置き換わります。治療時期については器械が安全に装着できる年齢(早くて4,5歳)まで待機します。骨切りを行う切開は出来る限り小さくして、きずあとを目立ちにくくします。
絞扼輪の解除の手術については皮膚をジグザグに形成する手術が行われてきましたが、きずあとが目立つ欠点がありました。当化では絞扼輪に平行な切開を行い、皮下脂肪を2層に重ねてくびれを平らにし、最後は1本のまっすぐな線のきずにします。表から目立ちにくい部分にZ形成術を追加することがあります。
麻酔は全身麻酔となります。麻酔についての不安についてはどの患者さまもお持ちです。丁寧に説明させていただきます。
手術の詳細(更新中)
(written by S. Saito, 2014)