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微小血管イメージング研究

光超音波イメージングを用いた血管解剖やバイオメカニクス研究

光超音波イメージングは新しい脈管イメージング技術である。近赤外レーザー光を照射し、吸収体から発生した超音波を検出し三次元画像化する。造影剤を必要とせず、被曝リスクがないことから、無~低侵襲な新しい画像診断技術として期待されている。

Ⅰ. 前外側大腿皮弁の薄層化手術への光超音波イメージングの応用

頭頚部癌や乳癌等の悪性腫瘍切除後及び重度外傷後の組織欠損を補修しかつ機能を再建する上で解剖学的かつ生理な形態および機能を再現せんとすれば、非常に薄く(薄層な)かつ形態の複雑な皮弁が必要となることがある。ただし皮弁を薄層化する作業では脂肪層深 部に走行する穿通血管を損傷するリスクがあった。われわれは前外側大腿皮弁の穿通血管を、光超音波イメージング技術を用いて三次元に描出することに世界で初めて成功した。プロジェクトチームは体表面からの深度ごとに色分けして表示するビューワーや表層を削除するツールを開発し、得られた三次元画像から手術に重要な穿通血管のみを描出できるようになった1)(図1)。得られた三次元の解剖学的情報を手術に応用するための手法として、透明シートまたはプロジェクションマッピングを検討したが、薄層化の際は挙上した皮弁の裏面から穿通血管の走行を知る必要があることから、反転可能な血管地図シートを作成することにした。まず皮下の三次元血管座標データを仮想の体表面に投影し、それを二次元に変換するプログラムを作成した。プロジェクションマッピング技術を応用してその二次元データをシートにカラー投影し(図2)、血管地図シートを作成した。頭頚部癌患者に対する再建手術で血管地図シートの試験を行い、その正確性と実用性を示した2)

図1. 生体ヒト大腿皮下の微細穿通血管を三次元に画像化することに成功(左:皮下全層, 右:表層削除ツール適用後) Itaru Tsuge, Susumu Saito et al. Photoacoustic Tomography Shows the Branching Pattern of Anterolateral Thigh Perforators in Vivo. Plastic and Reconstructive Surgery (2018).より引用

 

Ⅱ. 光超音波イメージングを用いた血管のバイオメカニクス研究

遊離皮弁術はドナーより血管をつけて組織を採取し、レシピエント血管と吻合して遠隔部位に組織を補填する形成外科の手術手技である。吻合血管が屈曲する状態をキンクと呼び、キンクは局所の血流停滞から血栓化を招き、皮弁壊死の原因となる。キンクは移植血管が関節をまたぐように設置された際に生じやすい。一方、健常な生体内の血管はどの部位でも常に循環を維持している。従って、生体内の血管にはキンクを回避する特別な機構があると考えた。そこで光超音波イメージングのラベルフリー特性(造影剤を必要としない特性)に注目した。ラベルフリーであれば、関節運動に伴うヒト血管のリアルな変形を描出することができる。対象として固有指動脈を選択した。固有指動脈は直線的な走行をしており、蝶番関節である指節骨間関節の回転軸屈側を通過する極めてシンプルな解剖をもつため、屈曲ストレスを受ける生体内血管モデルとして最適であると考えた。光超音波イメージングを用いて関節屈伸時のヒト固有指動脈の変形過程をダイナミックかつ三次元に描出した。曲率変化量の解析により、動脈は関節のすぐ近位側で変形すること、その変形は三つの連続するらせん様変形で構成されることを発見した3)(図2)。

図2. 指関節運動に伴う固有指動脈の変形メカニズム.番号は3つのらせん様変形を表す. PIPJ:近位指節骨間関節, DIPJ: 遠位指節骨間関節

 

参考文献

  1. Itaru Tsuge, Susumu Saito, Hiroyuki Sekiguchi, Aya Yoshikawa, Yoshiaki Matsumoto, Masakazu Toi, Shigehiko. Suzuki. Photoacoustic Tomography Shows the Branching Pattern of Anterolateral Thigh Perforators in Vivo. Plastic and Reconstructive Surgery. 141(5): 1288-1292, 2018.
  2. Itaru Tsuge, Susumu Saito, Goshiro Yamamoto, Hiroyuki Sekiguchi, Aya Yoshikawa, Yoshiaki Matsumoto, Shigehiko Suzuki, Masakazu Toi. Preoperative vascular mapping for anterolateral thigh flap surgeries: A clinical trial of photoacoustic tomography imaging. Microsurgery. 40(3): 324-330, 2020.
  3. Susumu Saito, Ryoma Bise, Aya Yoshikawa, Hiroyuki Sekiguchi, Itaru Tsuge, Masakazu Toi. Digital artery deformation on movement of the proximal interphalangeal joint. J Hand Surg (Eur), 44(2): 187-195, 2019.