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外傷後の指の関節拘縮・指の変形

外傷後の指の関節拘縮・指の変形について

「捻挫をしたら指が変形した」
「骨折は治癒したのに関節の腫れや痛みが治らない、指が動かない」
「ばね指の手術後に関節が痛む、伸びない」

疾患の概要

指の骨折や脱臼、捻挫の後に指に変形が残ることや、関節が正常な可動域まで動かなくなることがあります。 特に関節が固まってしまう状態を関節拘縮(かんせつこうしゅく)と呼びます。 腱の滑走が不十分なために有効な可動域が得られない場合を腱癒着と呼びます。 骨折部が曲がったまま癒合した結果、指の向きが変わり、指が隣接する指と交差することがあり、これを変形治癒と呼びます。 変形治癒や関節拘縮、腱癒着は併行して生じていることが多く、適切な診察と検査により原因を正確に把握し、多角的な治療計画を立てる必要があります。

 特に指の脱臼や関節内骨折の後にPIP関節(第2関節)が曲がった状態から完全に伸びなくなる(これを屈曲拘縮と呼びます)ことが多く、特に把持やつまみなどの動作に障害がなければ、日常生活に影響のないレベルの後遺症として放置されていました。しかしながらこのような拘縮の放置は治療結果への妥協であり、最善の努力をしたとは言えません。当科では関節拘縮について運動生理学的観点からの研究を行っており、徐々にそれが明らかになってきております。

 屈曲変形が軽度なものは簡単な関節の牽引やアルミ板による固定と運動を交互に繰り返すことにより拘縮を改善させることが可能であり、たとえ変形が強いものでも関節伸展器による強制的な牽引や、腱の剥離術、解離術などの手術により改善できる可能性があります。ただし関節の靭帯を解離する観血的関節授動術は術後の再拘縮の傾向が強いため、慎重に適応を判断しています。

外傷後に遺残した指の変形の例
多くは屈曲位となり完全伸展が不可能であり、洗顔や手袋の着脱などの手を開く行為で不自由となります。

外来で比較的多いのは

  • ばね指の手術後に生じるPIP関節の屈曲拘縮
  • PIP関節の脱臼や捻挫後の屈曲拘縮
  • 指の骨折後に長期にわたって遷延する関節の腫脹と疼痛(外傷性PIP関節炎)
  • 指の背側の切創後に進行した屈曲変形(伸筋腱の断裂によるボタンホール変形)
  • 長期間の伸展位固定による伸展拘縮(伸びたまま曲がらない)

が挙げられます。

関節の変形が長期になる程、靭帯が短縮して固定化し矯正が難しくなりますが、時間と手間をかければたとえ数年、数十年経過したものでも改善できる可能性が十分にあります。
過去にあきらめてしまい、放置していた変形についても一度受診されることをお勧めします。

(written by S. Saito, 2013)