外傷や先天異常の治療後に生じた爪の変形
外傷後の爪変形について
疾患の概要
爪の生えている部分は爪床といいます。とくに基部にある白い三日月のような場所は爪半月と呼ばれています。その爪半月よりさらに中枢には爪を作る基となる細胞があります。これを爪母といいます。爪母は皮膚に覆われているため、見ることはできません。爪母組織はひだ状になっており、そこから3層構造の爪が産生されます。爪母を全て失うと爪は生えてきません。一方爪床が損傷された場合には爪の成長がそこで停止してしまうことがあります。
また爪母や爪床が損傷されていなくとも、指腹が挫滅したり、切断により失ったりした場合には、爪が掌側に向かって彎曲することがあります。これをわし爪変形と呼びます。
爪床の損傷による爪変形については爪延長術を行います。 その方法としては、
- 爪床を移植する方法
- 段階的に爪床を延長する方法
- 人工皮膚を用いる方法
があります。
わし爪変形については掌側の組織を補填する治療が行われます。 主に局所皮弁という手法で掌側の皮膚を補填しますが、爪の下の末節骨が50%以上失われた症例に対しては、マッチ棒の先程度の大きさの骨を移植する必要があります。
外傷後に遺残した爪の変形の例(術前と爪床延長術の術後3ヶ月の状態)
爪床が無ければ爪はそこで成長を停止しますが、爪床を延長することで爪が伸びるようになります。
爪の変形については時期が経過したものでも直すことができます。 過去にあきらめてしまい、放置していた変形についても一度受診されることをお勧めします。
(written by S. Saito, 2014)