CM関節症(CM関節亜脱臼・CM関節変形性関節症)
CM関節症について
「親指の根元が痛む、でっぱりが出てきた」
「蓋が開けられなくなった」
疾患の概要
母指の基部にあるCM関節の変性疾患です。過度の関節の酷使や加齢、その他の原因により関節のゆるみと炎症が生じ、次第に軟骨が摩耗して骨が露出するようになります。初めはだるい痛みが多く、軟骨の摩耗が進行するとともに母指を使う作業の際にずきっとした強い痛みを自覚するようになります。特にペットボトルやビンの蓋の開閉、ドアの鍵の施錠などの行為で痛みを訴えられる方が多いです。CM関節が亜脱臼するために母指の基部に骨の突出を触れるようになります。同時に母指のばね指や手根管症候群を合併することがあります。
CM関節症の外観
湿布や装具の着用でも症状が改善しない場合には手術が考慮されます。痛みから解放され母指独特の強いつまみ機能を再獲得するために、痛んだ関節軟骨を切除し、腱による関節の安定化(制動術)を行います。骨は主に大菱形骨と呼ばれる手根骨を摘出します。腱による制動術を省略してもよい結果が得られることも多いですが、特に強いつまみや握力を必要とする場合には制動術を併用しています。手の専門医とよく相談し治療方法を検討することをお勧めします。
亜脱臼したCM関節のレントゲン写真
母指の基部に出っ張りを自覚するようになります。
母指中手骨が内転しMP関節が過伸展、IP関節が屈曲して母指がまっすぐに伸びないこともあります。
麻酔は全身麻酔か伝達麻酔(上肢のみの麻酔、静脈麻酔による鎮静を併用します)となります。
手術時間は平均2時間前後です。
手術をした母指から手関節までをギプス固定するため、その固定期間はその手を家事に使用することができません。
強い把持については術後3ヶ月を目標にリハビリを進めていきます。
入院期間は最短1泊2日から2週間前後までご相談に乗ります
手術の詳細</3>
1.切開について
母指の基部に30mm程度の弧状の切開を入れます。術後の傷跡は目立ちません。腱の採取も前腕に5mm程度の小さい切開から行います。
2.変性した関節軟骨の切除
CM関節は中手骨基部と大菱形骨の間の関節です。大菱形骨を全て、または部分的に切除します。切除することにより、つまみ動作による骨の接触がなくなるため、疼痛が減少します。
3.腱による関節の制動(安定化)
しっかりと安定したCM関節を形成するため、腱による制動を行います。腱は主に手関節屈筋腱や母指外転筋腱の一部を使用しますが、当科では現在は橈側手根屈筋腱の半分を用いた手術を採用しております。腱を母指中手骨基部に作成した骨孔に通して巻きつけることにより関節を安定化させます。巻きつけた腱がしっかりと固着されるまで、鋼線やギプスによる固定が3-4週間行われます。
この際にCM関節以外の関節(IP関節やMP関節)の運動を行い、伸筋腱の癒着や関節拘縮を予防する必要があります。
4.機能的予後について
この疾患の病態については未解明な部分があり、残念ながら全ての患者に完全な除痛が期待できるとは言えません。ただし過度の酷使をしなければ、大部分の患者において疼痛の緩和が得られております。
手術後3ヶ月経過した状態です。
早期訓練による拘縮予防を重要視しています。
手術後の見通しについて
手術後数日
・ シーネ内で指を安静にします。腫脹が引いたらギプスに変更します。
・ 安静を必要としない関節については運動を行います。
手術後2週目間まで
・ 創部の抜糸を行います。ギプスの更新を行います。
手術後4週前後
・ ギプスをカットして、鋼線の抜去を行います。
・ 装具に変更し、つまみを模倣した運動やぶん回しなどの運動を開始します。強く把持するような実作業での使用は避けていただきます。
手術後3ヶ月以降
・ 母指に負荷をかけることを許可します。
・ 作業のレベルに合わせて装具を併用するかどうかの指導をします。
(written by S. Saito, 2013)